独立行政法人労働者健康安全機構 長崎産業保健総合支援センター
 
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調査研究  
 
 
島嶼における産業保健と地域保健の連携強化

主任研究者 長崎産業保健総合支援センター長        栄田 和行
共同研究者 長崎産業保健総合支援センター相談員(産業医学)竹本泰一郎
共同研究者 長崎産業保健総合支援センター相談員(産業医学)青柳  潔

1 はじめに
 長崎県には50をこす島々に総人口の10%が居住している。産業活動の面でも全県の事業所総数の10%に当たる7,000事業所が存在している。離島の事業所の多くは第一次産業の零細事業所であるが、近年では第一次産業の産業化、保健・医療・福祉施設の整備等従来と異なる産業保健上のニーズが存在することが考えられる。本センターでも産業医共同選任の推進など島嶼の産業保健の充実を図ってきているが、人的・物的資源が不充分であることなどに由来する隘路も多い。地域保健医療との連携において限られた資源の有効な活用をはかることが、これら島嶼の産業保健活動の活性化に不可欠と考えられる。本研究調査の目的は島嶼の医師と事業所の両者に対する調査から、産業保健活動の現状にたいする理解・認識から産業保健活動に対するニーズを評価し、今後の島嶼の産業保健の発展を図ることである。

2 調査対象及び調査方法
1)調査対象:産業医に対する調査は本報告では同時に事業所調査が行われた五島列島の福江南松医師会員を対象とした。五島列島は佐世保市から長崎市にいたる西彼杵半島の西方に位置する人口48,400人の島嶼群である。医師数(医師会員)は57人(人口10万対医師数67)で、そのうち日医の認定産業医は研修中も含めて11名でしかない。地域産業保健センターは未設置であり、長崎地域産業保健センターの圏域とされている。長崎離島医療圏組合の2中核病院と4地域病院が存在している。
2)調査方法:医師への調査:平成15年10月に、産業医活動の実態調査として愛知産業保健推進センター作成の質問票に準拠した調査票を長崎県医師会を介して島嶼部の各郡市医師会員(五島(福江・南松)、壱岐、対馬、長崎の一部))に配布した。本報告では事業所に対する調査も行った五島(福江・南松)医師会員からの回答のみを分析した。福江南松医師会における回収率は21/57=36.8%であった。
事業所への調査:鹿児島産業保健推進センターの行った調査を参考に調査票を作成し、長崎労働局作成の事業所名簿にもとづき、平成16年2月に38事業所に直接郵送し事業主又は衛生担当者に回答してもらった(回収率71%)

3 結果
1)産業医の選任状態
 回答を得た28事業所の業種は製造業が少なく、土建業、漁業関連団体と医療福祉業の割合が高かった。事業所の規模と産業医選任との関連をみると表1の通り、選任義務のある従業員50人以上の事業所でも半数の事業所で選任されていなかった。逆に従業員50人以下の事業所でも約4割の事業所で選任されている。産業医を選任していない事業所としては漁業関係や福祉関連事業所が多く、選任義務のあることを知らなかった、適切な医師が見当たらないという理由が多かった。 しかし、事業所調査で揚げられた7名の医師のうち、日本医師会の認定産業医は半数にも及ばなかった。
 医師では、回答を寄せてくれた22名の医師のうち、産業医(嘱託)は7人(32%)に過ぎなかった。1人当たり担当事業所数では3医師が1ケ所、3医師が3ケ所であった。2中核病院を除き、ほとんどが30人、50人規模の零細・小規模事業所であった。医師側の調査でも現に産業医活動を行っている医師の中でも全てが日本医師会認定産業医ではない。

表1 産業医の選任と衛生委員会の設置


2)産業医の選任と安全衛生委員会の設置
 事業所側の調査によると衛生委員会は設置義務のある14事業所中8事業所(57%)、設置義務のない事業所で6/13(46%)に設置されていた。表1にみるように、衛生委員会の設置は産業医の選任と強い関連性をもっていた。従業員数の如何を問わず、産業保健についての関心の強弱がこうした対極的な対応を生じているといえよう。 
3)産業医の業務
 表2にみるように、事業所側、医師側調査の双方で産業医の業務として最も高率であったのは健康診断に関する事項、特に健診結果の判定であった。この地域の一般健診は健診団体とともに地元医師や病院の関与が大きいのが特徴である。診察から判定、事後措置・健康相談保健指導にいたる一連の健診の流れが日常診療の一環として行われているのかもしれない。安全衛生委員会を設置している事業所の43%で医師を委員会の構成員としている。産業医調査でも産業医の半数以上が衛生委員会への出席を業務としている。しかし、過去の出席状況、事業所への訪問頻度等を勘案すると、衛生委員会における産業医活動は今後に期待すべきである。職場巡視においても同様に医師の希望と事業所の要望が食違っているところが多いと推測される。作業環境や特殊健診に対する認識は産業医、事業所側双方において高くはない。

表2 産業医の業務内容


4 まとめ
選任義務のない小規模事業所でも産業医の選任や衛生委員会の設置が進んでいることは、島嶼の産業保健が必ずしも低レベルでないことを物語っている。特に地元医師による職場健診の実施は、プライマリケアの一環として産業保健と地域保健の連携が図られていることと評価できる。反面、産業医活動が医師会、事業所双方において健康診断の実施のみが産業医活動と理解されている傾向がある。
病院・保健・福祉業や水産業・漁業関連団体で認定産業医の選任が遅れている傾向が認められる。急速に産業化が進んでいるこれら業種で近代的な産業健康管理体制の樹立が必要と考えられる。認定産業医の研修、共同選任事業等を通じて医師、事業所の双方に現代の産業医の機能を理解してもらうことが必要であろう。
 
   
 
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